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第三話 《 取り立て 》

第三話 《 取り立て 》

事業をはじめて1年半、本業の経営状態は最悪のまま、アルバイトをしていましたが、ひょんなことから他の事業を経営することになりました。
やはりスタートは順調。
これを機に今までの事業とアルバイトはやめて、これ一本で生計を立てていくことにしました。
仕事は、比較的、順調で、ここ数年でこんなに楽しいことはないくらいに感じていました。
きっとAさんにとってこの1年半がとってもつらいものだっだのでしょう。
しかし、どうみても以前の開業時となんら変わっていない気がするのは気のせいでしょうか。
もともと自信家のAさんが故に、事業の好調なスタートは危険な薫りがするのです。
数ヵ月後には、雑誌の取材もされるようになりました。
週刊誌の4ページをカラーで飾るAさんは意気揚々と働いている元気な姿でした。

ある日、彼の姿はコンビニエンスストアにありました。お客様としてではなく、アルバイトとしてです。
そう、彼はまた事業経営が苦しくなってきたのです。
数ヶ月前の元気はなく負のオーラを身にまとっていました。
生活状況はというと、引越してきた壊れそうなアパートで一人暮らし。
電気、ガス、水道は頻繁に停止しており、電話すらつながらない状態にありました。
気になるのは消費者金融でキャッシングした借金ですが、しっかり返済はできているのか?
答えはノーです。
アルバイト一本でやっていけばまだましなのでしょうが、新しく手掛けた事業を簡単に辞めることができなかったのです。
生産性が悪いことは充分わかっていたのですが、持ち前の自信が、Aさんを縛り付けていたのです。

ある日の昼過ぎ、朝一で仕事から帰ってきたAさんは、布団の中にいました。
すると、

『 Aさーん、Aさーん!!いますかー!! 』

と、玄関で呼ぶ声がしたのです。Aさんはドキッっとしました。
キャッシング業者からの返済の取立てだということはすぐにわかりました。
今まで電話が何度かあったことは経験していましたが、実際に取立てにきたのは初めてだったのです。
彼は息を殺して布団の中で身を潜めていました。
取立の声が止んだと思ったら、裏手に気配を感じました。
ここはアパートの1階で裏庭と部屋とは、すりガラス一枚で仕切ってあるだけだったのです。
再び、取立の叫ぶ声が聞こえたかと思うと、

ガラガラガラガラ…

その裏手のガラス扉が開いたのです。鍵をかけ忘れていました。
Aさんはハッとしながらも、なおも寝たふりをしていましたが、さすがにこれ以上は寝たふりをつづけられず、ムクッと起き上がり、取立ての人と直接話をすることになったのです。
このあと、少ない生活費の中からキャッシング返済の滞納分を返済したそうです。

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